サステナブルな漁業とは?私たちができる海の恵みを守る選択
「海業(うみぎょう)」という言葉をご存知でしょうか?漁業と観光業を組み合わせた、新しい海の楽しみ方として注目されています。しかし、この「海業」を語る上で欠かせないのが、**海の恵みを未来につなぐ「サステナブルな漁業」**という視点です。
近年、テレビやニュースで乱獲や海洋汚染といった海の危機が報じられることが増えましたよね。私たちの食卓に欠かせない海の幸を守るために、一体何ができるのでしょうか?今回は、海の現状から、持続可能な漁業への取り組み、そして私たち消費者ができる選択まで、わかりやすく解説していきます。
海は今、どんな状況?深刻な問題と現状
私たちが暮らす地球の約7割を占める広大な海は、私たちに豊かな恵みをもたらしてくれます。しかし、その海の資源は、残念ながら無限ではありません。
1. 乱獲(漁獲量の減少)
世界中で魚の需要が高まる中、一部の地域では過剰な漁獲により、特定の魚種が激減しています。日本の周辺海域でも、かつては豊富だった魚が獲れなくなっている、という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、稚魚が育つ前に捕獲してしまったり、特定の魚種ばかりを狙いすぎたりすることで、海の生態系のバランスが崩れてしまうことが原因です。
2. 海洋汚染(プラスチックごみ問題など)
私たちが生活の中で排出するプラスチックごみや生活排水などが、海に流れ込み、深刻な汚染を引き起こしています。特にプラスチックごみは、分解されるまでに長い時間がかかり、海洋生物が誤って食べてしまったり、絡まってしまったりするなど、生態系に大きな影響を与えています。マイクロプラスチックの問題も、私たちの健康に影響を与える可能性が指摘されています。
3. 気候変動(海水温上昇、海洋酸性化)
地球温暖化による海水温の上昇は、魚の生息域を変化させたり、サンゴ礁を白化させたりするなど、海の生態系に深刻な影響を与えています。また、大気中の二酸化炭素が海水に溶け込むことで起こる海洋酸性化は、貝類やサンゴなどの成長を阻害し、海の生物多様性を脅かしています。
これらの問題は、遠い海の向こうの話ではありません。私たちの食卓から魚が消えてしまうかもしれない、そんな未来が現実になりつつあるのです。
海を守るために!持続可能な漁業の取り組み
こうした海の危機に対し、世界中で様々な取り組みが進められています。その一つが**「持続可能な漁業」**です。これは、今の世代が海の恵みを受け取るだけでなく、次の世代も同じように海の恵みを受け取れるように、資源を管理し、環境に配慮した漁業を行うことを指します。
1. MSC認証(海のエコラベル)
持続可能な漁業の代表的な取り組みとして挙げられるのが、**MSC認証(海洋管理協議会認証)です。これは、WWF(世界自然保護基金)とユニリーバが共同で設立した国際的な非営利団体MSCが、「持続可能で適切に管理された漁業」**に対して与える認証制度です。
認証の基準:
乱獲を防ぐ資源管理が行われているか
海の生態系や環境に配慮しているか
適切な漁業管理システムが導入されているか
メリット: MSC認証を受けた魚介類は、目印となる**「海のエコラベル」**が貼られて販売されます。消費者はこのラベルを目印に、環境に配慮した商品を選ぶことができます。
2. 漁獲量の管理と漁法の改善
各国や国際機関が協力し、科学的なデータに基づいて漁獲量を制限したり、漁獲が少ない時期に禁漁期間を設けたりすることで、水産資源の回復を目指しています。また、目的の魚以外が獲れてしまう「混獲」を減らす漁具の開発や、海底環境への負荷が少ない漁法の導入なども進められています。
3. 養殖業の持続可能性(ASC認証など)
天然の魚だけでなく、養殖魚も私たちの食卓には欠かせません。養殖においても、環境負荷の低減や、抗生物質の使用制限、地域社会への配慮など、持続可能な取り組みが求められています。**ASC認証(水産養殖管理協議会認証)**は、環境と社会に配慮した養殖水産物に与えられる認証です。
消費者としてできること:海の恵みを守る賢い選択
「大きな話すぎて、自分には関係ないのでは?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。私たち一人ひとりの消費行動が、海の未来を変える大きな力になります。
1. 「海のエコラベル」付き商品を選ぼう!
スーパーや魚屋さんで魚介類を選ぶ際、**MSC認証の「海のエコラベル」**が付いている商品を探してみてください。このラベルが付いているということは、その魚が持続可能な方法で獲られたものである証拠です。私たちがこれを選ぶことで、持続可能な漁業を応援し、海の資源を守ることに貢献できます。
2. 地元の旬の魚を選ぼう!
旬の魚は、一般的に水産資源が豊富な時期に獲れるため、環境負荷が少ないと考えられます。また、地元の魚を選ぶことで、輸送にかかるエネルギーを削減し、地域の漁業を応援することにもつながります。魚屋さんで「今日のおすすめは?」と尋ねてみるのも良いでしょう。
3. 多様な魚種を食べよう!
私たちは普段、マグロやサーモンなど、特定の魚種ばかりを食べがちです。しかし、特定の魚種に需要が集中すると、その魚が乱獲されるリスクが高まります。普段食べ慣れない魚や、あまり市場に出回らない魚にも目を向けて、様々な種類の魚を食卓に取り入れてみましょう。新しい美味しさに出会えるかもしれませんよ。
4. プラスチックごみ削減を心がけよう!
買い物袋やペットボトルなど、日々の生活で排出されるプラスチックごみを減らす努力は、直接的に海洋汚染の削減につながります。マイバッグやマイボトルを持ち歩く、使い捨てプラスチック製品を避けるなど、できることから始めてみましょう。
「海業」は持続可能な海の利用にどう貢献できる?
冒頭で触れた「海業」は、まさにこの「持続可能な海の利用」に貢献できる可能性を秘めています。
漁業への理解促進: 消費者が漁業の現場を体験することで、海の現状や漁師さんの努力、持続可能な漁業の重要性を肌で感じることができます。これにより、魚への感謝や環境意識が高まり、賢い消費者へとつながります。
新たな価値創造と収益源: 漁業体験や加工体験、マリンアクティビティなどを通じて、漁業に新たな収益源をもたらします。これにより、漁業者は安定した収入を得て、乱獲に頼らない持続可能な漁業への転換を促進することができます。
地域活性化と文化継承: 海業は、漁村に人を呼び込み、地域経済を活性化させます。また、漁業の文化や知識を伝える場となり、後継者育成や地域コミュニティの維持にも貢献します。
環境教育の場: 実際に海に触れ、漁業を体験する中で、海洋環境保護の重要性を学ぶことができます。次世代を担う子どもたちへの環境教育の場としても大きな役割を果たします。
「海業」は、単なる観光ビジネスに留まらず、海の恵みを守り、漁業と地域を未来へとつなぐ、重要な架け橋となり得るのです。
まとめ:海の恵みは、私たちみんなで守るもの
乱獲、海洋汚染、気候変動…。海は今、たくさんの課題を抱えています。しかし、悲観的になる必要はありません。持続可能な漁業の取り組みは世界中で進んでおり、そして私たち一人ひとりの選択が、その未来を大きく左右する力を持っているのです。
「海のエコラベル」の付いた魚を選ぶ、旬の魚を楽しむ、プラスチックごみを減らす。そして、もし機会があれば「海業」を通じて海の現場に触れてみる。
これらの行動は、決して難しいことではありません。今日からできる小さな選択が、豊かな海の恵みを未来の世代にも引き継いでいくための、大きな一歩となるでしょう。美しい海と美味しい魚を、いつまでも楽しみ続けるために、私たちみんなで海の恵みを守っていきませんか?