サウジアラビアの住居はどんな感じ？暑い国での暮らしを支える工夫と進化
広大な砂漠が広がるサウジアラビア。この国の住居は、過酷な気候条件や文化的な背景が色濃く反映されています。伝統的な土壁の家から、未来都市の斬新なデザインまで、サウジアラビアの住居はまさに「環境適応」と「進化」の物語を語っています。
今回は、サウジアラビアの住居が持つユニークな特徴を深掘りし、その工夫の数々を一緒に見ていきましょう。
1. 灼熱の気候に打ち勝つ！断熱と通風の知恵
サウジアラビアの夏は、気温が40℃を超えることもザラ。日差しは強く、内陸部は乾燥し、沿岸部は湿度が高いという、まさに「暑さのデパート」のような気候です。そんな環境でも快適に暮らすための工夫が、住居のあちこちに凝らされています。
分厚い壁と小さな窓:
伝統的な家屋では、日中の熱気を遮断し、夜の冷え込みから守るために、壁が驚くほど分厚く作られています。材料には、その土地で手に入る泥レンガが使われることが多く、これは断熱性に優れています。窓は、強い日差しや砂嵐の侵入を防ぐために小さく、そして少なく作られています。現代の建築でも、高性能な断熱材が欠かせません。
涼を呼ぶ「中庭（パティオ）」:
多くの伝統的な家屋には、建物の中心に中庭が設けられています。これは、外部からの視線を遮って家族のプライバシーを守るだけでなく、非常に実用的な目的があります。中庭は、建物全体に風の流れを作り出し、熱気を逃がす煙突のような役割を果たします。さらに、植栽や小さな噴水を置くことで、涼しい微気候を作り出す工夫もされています。
風と日差しを操る設計:
建物自体を工夫して、暑さを軽減する知恵もあります。例えば、建物の幅が狭い方を東西に向けることで、日中の日差しが当たる面積を減らしたり、かつては**「ラワシーン」**と呼ばれる美しい木製の出窓やバルコニーを設け、日よけと風通しを両立させたりしていました。
2. 文化と伝統が息づく住まいの特徴
住居は単なる箱ではありません。そこには、その土地の文化や人々の暮らしぶりが色濃く反映されています。
泥レンガの温もり:
特に首都リヤド周辺のナジュド地方では、地元で豊富に採れる泥（粘土）を使った泥レンガ建築が発展しました。これは、高温多湿な環境でも快適に過ごせる昔ながらのエコな建築方法であり、独特の温かみと重厚感があります。
プライバシーを重視した構造:
イスラム文化では、家族のプライバシーが非常に重視されます。そのため、伝統的な家屋は外から中が見えにくいように、窓が少なかったり、中庭があったり、部屋の配置にも工夫が凝らされています。重厚で装飾的な玄関の扉も、外部からの視線を遮る重要な役割を担っています。
おもてなしの空間「マジュリス」:
ほとんどのサウジアラビアの家庭には、家族用の居住空間とは別に、来客をもてなすための特別な部屋**「マジュリス」があります。これは、サウジアラビアの手厚いホスピタリティ精神**を象徴する場所であり、客人をもてなすことを何よりも大切にする文化が反映されています。
3. 未来へ向かう住居の進化：超近代都市からエコ住宅まで
潤沢なオイルマネーと未来へのビジョンを持つサウジアラビアでは、伝統を守りつつも、革新的な住居の開発が急速に進んでいます。
広大な居住空間:
国土が広大で人口密度が比較的低いサウジアラビアでは、現代の住宅も非常に広い敷地を持つ一戸建てのヴィラが一般的です。家族単位の広々とした空間でゆったりと暮らすことが重視されます。
最先端テクノロジーと環境調和:
紅海沿岸で開発が進む高級リゾートや、世界が注目する未来都市**「NEOM（ネオム）」**では、環境に配慮した最先端の建築技術が導入されています。例えば、建築家の隈研吾氏が手がけたヴィラのように、木材や粘土といった自然素材を使いながら、環境負荷を抑えるプレハブ工法が採用されたりしています。
未来都市「The Line」の挑戦:
NEOMプロジェクトの中核をなす「The Line（ザ・ライン）」は、全長170km、幅200m、高さ500mという、これまでの常識を覆す垂直都市です。ここでの住居は、自然と共生しながら、移動手段を排した持続可能な暮らしを実現するための、全く新しい形態をしています。
高層ビルと都市のランドマーク:
首都リヤドなどでは、モダンな超高層ビルが立ち並び、ガラス張りのオフィスビルや独特の形状を持つレジデンスが都市の景観を形作っています。これらは、厳しい日差しに対応するための高性能ガラスや、デザイン性と機能性を両立させた設計が特徴です。
まとめ：サウジアラビアの住居は「暮らしの知恵」と「未来への希望」の結晶
サウジアラビアの住居は、灼熱の砂漠気候やイスラム文化の特性に深く根ざした、多様な表情を持っています。伝統的な家屋に見られる断熱や通風、プライバシー保護の知恵は、まさに先人たちの知恵の結晶です。
そして今、この国は、その豊かな資源を活かし、環境と調和しながらも最先端の技術を駆使した、これまでにない未来の住居を創造しようとしています。サウジアラビアの住居を知ることは、彼らの歴史や文化、そして未来への大きな希望を垣間見ることにもつながるでしょう。